日常の中にある「変」に注目
「変」をおもしろがれる力が発想力・企画力の源
文化人類学の講義では「ウンチはなぜ汚いのか」ということをまじめに議論することがあります。多くの人は「汚いものは汚い、そんなの当たり前」と断じて、それ以上に深く考えたことはないと思います。しかし、「何がきれいで、何が汚いのか」というのも民族によってまったく考え方が異なります。私たちが常識だと思っていることは、今の日本でたまたまそうなっているだけに過ぎないのです。
最近は社会全体で、独創的な発想や企画力をもった人材を求めるようになってきました。ところが、常識にとらわれて頭が固くなっていたら、独創的な発想は出てきません。外の文化に触れることで、いかに自分たちの常識にとらわれて頭が固くなっているかを自覚できることが文化人類学を学ぶ一つの意義ともいえるでしょう。
日常の中で通り過ぎてしまっている「変なモノ」に注目し、それを柔軟な頭で「へぇ、おもしろい」と思えるかどうか。私はこれを「楽力(がくりょく)」と呼んでいますが、おもしろがれる能力が重要なのです。これは天性の能力ではなく、きちんとしたコツがあり、文化人類学はそれを鍛えることができるのです。
こうした能力が身につくと、旅行の楽しみ方もがらりと変わります。わざわざ観光地やテーマパークに行かなくても、路地を歩いたり、食品売り場に行って商品の並べ方を観たりするだけでも楽しめるようになります。ただの街歩きが発見の連続になるのです。
最近はグローバル対応力ということがしきりにいわれています。そこで多くの人が声高に必要性を訴えるのが語学力とマナー。しかし、より重大なのは文化を理解することです。いくら英語が話せても、インドに行って「この人たち、手で食べてるよ、汚い」と思っていたら、グローバルな対応はとてもできません。違いを「おもしろい」と思える力、それぞれの社会を動かしている仕組み、つまり文化を考察する力を育てるのにも文化人類学は役立つのです。
大学最初の講義で衝撃を受けて文化人類学の道へ
私は元々、新聞かテレビの記者になりたくて、政治経済学部に入りました。それまでは文化人類学という言葉すら知りませんでした。ところが大学に入って最初に受けた文化人類学の講義に衝撃を受けて、文化人類学の世界にのめり込んでしまいました。
講義を担当していたのは、祖父江孝男先生というイヌイットの研究者で、先生がおっしゃるには、イヌイットは客人をものすごくもてなす民族なのだそうです。自分の持っている食べ物を次から次へと分け与え、自分たちの分がなくなっても提供し続け、一方のもてなされる側もそれを遠慮してはいけないというのです。ですから、どんどん食べてしまい、あっという間に食料は尽きてしまいます。すると今度はもてなされていた人が、食料を持ってきてもてなす側に回るのだというのです。
先生が調査のためにイヌイットの村にテントを張って滞在し始めたころ、珍しい外国の客人が来たと村の人たちがこぞって見物に来たそうです。ところがその人たちは一向に帰る様子がなく、食事の時間になっても居座っている。しかたなく村人が見ている前で食事をし始めると、その様子をずっとニコニコしながら眺めている。彼らは寝る時間になっても帰ってくれない。そこで村人の見ている前で寝ることにすると、翌朝起きたときに、まだ同じ顔ぶれがニコニコしながら見ていたというのです。
日本人の感覚からすると非常識なように思えますが、厳しい自然環境の中で生きていくうえで、人と人のつながりを作り出し、助け合うことが何より重要な彼らにとってはそれが当然のもてなしだったわけです。今まで常識だと思って守ってきたことが、実は日本の中だけのもので、世界にはさまざまな価値観があるというのを知らしめるエピソードといえるでしょう。
これほどにおもしろい学問であるにもかかわらず、高校生のころは文化人類学という言葉すら知らなかったのですから、学びたいと思うはずもありません。たしかに高校生が幅広い学問を知り、自分がどの道に進むべきかを見定めるのは難しい面もあるでしょう。ですから大学1年次くらいまでは興味を傾けられる学問を探す期間と考えるくらいがいいのかもしれません。
全国のオススメの学校
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佛教大学(歴史学科)開学111年と京都市内の中でも長い歴史を持ち、7学部15学科を設置する総合大学。学生数は約6,000名。目的意識の高い学生が多く、卒業後の目標実現に向けて学んでいる。私立大学 / 京都
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関西大学(人間健康学部)1886年「関西法律学校」として開校。2022年に大学昇格100周年を迎えました。学是「学の実化(じつげ)」のもと、世の中に役立つ生きた学問を理論と実践の両面から学び、世界に貢献できる人材を育成します。私立大学 / 大阪
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鶴見大学(文化財学科)知識や技術を教えるだけではなく、一人ひとりの特性に応じたきめ細かな教育と、感謝の気持ちを養う教育を実践しながら、世の中に貢献できる人間を送り出すことを心がけています。私立大学 / 神奈川
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富山大学(人文学部)国公立大学 / 富山
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京都文教大学(実践社会学科)保・幼・小・中・高の免許・資格、精神保健福祉士受験資格などが取得できる他、警察官、消防官、地方公務員、日本語教師をめざす人のサポートも充実私立大学 / 京都
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フェリス女学院大学(グローバル教養学部)教育理念「For Others」の下、国内外で進むグローバル化がもたらす社会課題解決に当事者として貢献できる実践力を身に付けます。少人数の課題解決型授業、演習を中心に活発なコミュニケーションを多数経験できます。私立大学 / 神奈川
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津田塾大学(多文化・国際協力学科)女子高等教育の先駆者、津田梅子が創立した津田塾大学は、2020年に120周年を迎えました。「英語教育」「少人数教育」「高い専門性と幅広い教養の修得」を理念とし、社会を担うall-round womenを育成し続けています。私立大学 / 東京
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獨協大学(国際教養学部)外国語教育、国際交流(留学)、少人数教育が特色。全学生が4年間一つのキャンパスで学ぶ「オールインキャンパス」は、学部・学科の枠を超えた人との交流、幅広い知識の習得が可能な教育環境です。私立大学 / 埼玉
文化人類学とはどんな学問?
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上杉謙信がたどった道を追って、新潟と山形の寺院へ。調査に熱中する4カ月間を過ごしました。
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京都にある46の寺社を取材して、御朱印巡りの最前線を調査。将来は、中学生に歴史の魅力を伝える先生になりたいです。
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