さまざまな環境を想定して、コンクリートの劣化のしかたを明らかに
未知の部分が多いコンクリートを研究する伊代田岳史教授
コンクリートはいまだに謎多き材料
現在のコンクリートが建設構造物に使われ始めてから約120年。コンクリートは構造物を作るのに欠かせない素材です。もはや当たり前のように利用されているコンクリートですが驚くべき事実があります。ご存じのとおり、コンクリートはセメントと水、砂、砂利などを混ぜ合わせて作りますが、実はそのときどのような化学反応が起きているかは、完全には解明されていないのです。さらに時間が経つと、劣化が生じたり、収縮したりするのですが、完全なメカニズムが解明されていません。
もちろん、限られた状況下ではどんな劣化が起きるのかはわかっています。しかし、コンクリートが利用されるのは道路や橋、上下水道、ダム、港などあらゆる構造物です。海の近くなら海水や潮風、波の影響を受けるでしょうし、温泉地や下水道なら硫酸などにさらされるでしょう。地域によって気温や湿度も違いますし、荷重の掛かり方も違います。それぞれの環境において、どんな劣化が起きて、どれくらい耐えられるのかは、パターンが多すぎて検証しきれていないのです。
そこで私の研究室では、コンクリートをさまざまな環境にさらして、どんな劣化のしかたをするのか、そしてそのときコンクリートの中ではどんな変化が起きているのかを研究しています。道路や橋といったスケールの大きなものを作るためにミクロの世界を考える、不思議な世界です。
複雑なしくみを単純化して実験
実験室でコンクリートを実際に作り、これをさまざまな環境にさらしてどういう変化が起こるのかを検証していきます。
実験は砂や砂利が混じった普通のコンクリートでも実施していますが、混合物が多すぎて化学的な変化がわかりにくくなってしまうこともあります。そこで、単純化してセメントと水だけのセメントペーストを作り、その変化を化学的な反応から観察するという手法をとっています。セメントと水は、砂や砂利などをくっつける接着剤の役割を果たしていますから、その挙動を検証することで、コンクリートの性質が見えてくるというわけです。
もう一つの頭を悩ませるのが時間の問題です。コンクリートの耐用年数は半永久的、厳しい環境でも20~30年と考えられていますから、これを現実の条件で検証していたら、研究がちっとも進みません。そこで数十年分の劣化を1年で再現するといった技術を駆使するなど、研究にはアイデア力も不可欠です。
そのほかにも、これまで開発された技術を上手に利用してコンクリート構造物をよりよくする研究をいくつか進めています。その中には、コンクリートの施工を手助けするセンサーや、人が入れないような場所に立つ橋脚を補修するドローンの開発など、他分野との協同も積極的に行っています。
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