人々が豊かな生活を送れるための方法を探り、研究を進める
ダム開発による住民移転に伴う課題解決を研究する藤倉良教授
アジア地域での水力発電の開発に伴う住民移転の問題
アジア地域のダム開発に伴う住民移転について研究をしています。
この地域では、国の発展のために、ダム開発が推し進められてきました。その理由のひとつは、電源開発のため、もうひとつが、農業振興のためです。水力発電所を建設すれば、より多くの人に安定した電気を届けられるようになります。また、乾季と雨季にはっきり分かれているような地域では、これまで耕作ができたのは雨季のみでしたが、ダムができればいつでも水が得られるようになり、乾季にも収穫が得られるようになります。
しかし、ダムを造ると広大な土地が水没します。そこに住んでいる人はどこかに移り住んでもらわなければなりません。
先進国であれば補償制度もしっかりしていますが、開発途上国では、そうした制度がまだ整っていません。また、制度があっても、しっかりした運用ができる国も多くありません。実際に、移転によって経済的に困窮することになった人は多く、大きな問題となっていました。その批判は、水力発電所を造った当事国に対してだけでなく、資金援助をした国にも向けられ、日本でも資金提供したダムをめぐって裁判が起こされたことがあります。
では、どのようにすれば、移転をすることになった住民が豊かに暮らし続けることができるのか、この問題を解決するためにはどうすればいいのかというのが、私の長年の研究テーマです。
すべての人が豊かさを享受するために
課題はたくさんあります。まず、補償はお金でするのか、代替地でするのかを検討しなければなりません。お金で補償するにしてもいくらが妥当なのか、そしてどう支給するのかといった問題があります。一度に多額の補償金を給付したところ、全部を使いこんでしまって、結果的に困窮することになってしまうというケースもあります。そうならないためには、補償金が適切に使われるためのしくみが必要になります。
また、移転する住民の多くは農家ですから、移転先でも農業に就くケースが多く考えられます。しかし、移転した先の土地と元の土地で気候などの状況が違えば、それまでとは違う作物を作らなくてはならなくなるかもしれません。そうした場合、自力で一から耕作のやり方を覚えていたのでは、何年もかかってしまいます。農業指導をしてくれる人がいたほうがいいでしょう。移転をきっかけに農業をやめたいという人がいれば、職業訓練なども必要になります。
ダム開発は、その国を豊かにしてくれるものに違いありません。だから、開発に伴う移転によって貧しくなってしまうことがないように、豊かさをすべての国民が享受できるようにするために、多くの専門家と協力しながら、研究をしています。
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